ふっと身体を預けたくなる歯科医院

大きな屋根、枡形道、低く深い軒、石積の護岸や丘、それに寄りつく細い道。
ふっと身体を預けたくなる形がたくさん見られる岩手、盛岡。

これらの形を学び、そして引き受けて、青山の街角に地域に開かれた歯科医院を作りました。

医院は大きな待合室と小さく区画された8個の診察室、そしてそれらをつなぐ道からなります。
内3個の小さな診察室は庭の延長のような居場所とし、5個の小さな診察室は一つ一つ小さなお店のような佇まいとすることで、
小さな街のような歯科医院を目指しました。

そうすると待合室はその街の中の大きな公園、診察室の角はまさに街角。この小さな街のあちらこちらでいろいろな出会いや会話が生まれそうです。

また交差点に面した建物の角には大きな開口を設け、その窓台に腰を掛けられるように設えました。
この窓辺は青山という街と、歯科医院という小さな街をつなぐ、街と街をつなぐなんだか面白く不思議な窓辺ということになります。

古くは観武ヶ原と呼ばれていたこのあたり。その名の示す通り、岩手山を望む最高の観晴らし場であったこの地域には現在、ナショナルチェーンが大きな看板と軒を忙しなさと共に連ねている。
この、どこの地方にでもあるお馴染みのロードサイドへと移り変わりつつある観武ヶ原に、少しでも心穏やかに、人の活動と休息が木々の間から垣間見える、
そんな街角の窓辺となることを想い、またそこに、ふっと身体を預けてみて頂きたいと願っています。