shiba house/関屋の家

敷地は新潟市中央区、砂丘地の起伏に沿って形成された古くからの閑静な住宅街。
瀟洒な社宅の解体により出来た、7軒の家に囲まれた高低差のある旗竿敷地である。
竿部分は前面道路から長さ30mの坂道となっており、それを登りきり開けた平坦地に住宅を計画した。

一帯は斜面地にあるということもあり、1階はRC造で土圧を支持し、個室やガレージにあて、2階をLDKなどにあてるケースが多く、
そのせいもあり、通りには生活が現れずコンクリート壁とシャッターが無機質に静かに並んでいた。
そういった町の振る舞いに対し、今計画ではこの土地だからこそある地形や風景に対して、いかに暮らしを開き固有の快適性を獲得できるかが課題であった。

砂丘地の起伏にそのまま庭木や家具、暮らしの調度品を配置し、まさに砂丘にそのまま暮らすかのような地形との親密性を計画した1階の個室群。
屋外に採用している壁材がそのまま屋内に入り込み、屋内に採用した壁材がそのまま屋外に出て行く。
サッシも大きく開き全ての框を隠すことで、屋内と屋外の境界はより複雑にそして曖昧になる。ここでの暮らしが、砂丘に遠くどこまでも延長するかような開き方を目指した。

起伏を駆け上がるように1Fから2Fへの階段を抜けた先に、少しくびれた大きなトンネルのような空間をLDKとして計画。
側面は全て壁面収納とし、その中には家財や色々な物と一緒に、トイレや浴室、さらには書斎といった室をも収納した。
トンネルの両端に大きく開けられた開口からは、直射光は制限し、白壁から反射したバウンド光や回折光のみを取り込み、空間が定常的に柔らかな光で満たされるように計画した。
また、少しくびれたトンネルのこちら側と向こう側という体験は、実際以上に空間を広く遠く感じさせてくれると同時に、開口から覗く街並みや遠くの風景を実際以上に近くに感じさせてくれる。

昔から続く、この土地での堅牢な家の建ち方に習いながらも同時に、この土地の現在の街並みに対し批評性をもち、ここでの暮らしが砂丘の連続や街並みにまで延長し溶け出して行くような、
そんな開かれた建ち方と屋外との親密な暮らし方が実現出来たのではないかと考えている。

竣工
2020.8
種別
新築
用途
専用住宅
規模
207.7㎡(ガレージ含む)
構造
木造
所在
新潟県新潟市中央区
設計
東海林健建築設計事務所 (担当 間 遼一)
構造設計
田中哲也建築構造計画 (担当 田中哲也)
施工
栗田工務店 (担当 市川光男)
造園工事
荻野寿也景観設計 (担当:荻野寿也)
照明設計
大光電気株式会社 TACT (担当:古川愛子 高橋鉄平)
撮影
© 藤井浩司(toreal)
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