san house/学校町の家 リノベーション

学生宿舎、住居と用途を変えながら築後100年を経過した木造家屋のフルリノベーションである。
旧来の日本家屋の特徴でもある東西に長く南北に短い形状。
アプローチとなる北側には前庭、住居を挟んだ南側にも十分な広さの庭を構えるといった外部環境の良さを持ちながらも
その主体となる住居の一部は腐敗し、耐震性能、断熱性能は現在の基準から著しく劣る状態であった。

クライアントはこの家屋の佇まいを気に入っており、時間を重ね「経年美化」した和室には手を加えずに保存することを選択。
一方「経年劣化」してしまった部材は入れ替えることで耐震補強を行い、新たに断熱材を付加することで性能の改善を行うこととした。
保存することになった和室を中心にしてロの字状に白を基調とした新しい空間を配置した。
和室の周囲には階段や本棚、またダイニングやキッチンなどがパラパラと展開する。
外周に配置された諸室は庭に近く明るく、和室から連続する広がりのある一部であると同時に外部環境から和室を守るバッファスペースともなる。
冬季は和室の建具を閉じて仕切ることで空調エリアを小さくし環境を整えやすく、春秋の中間期はそれらを開け放つことで内部から外部まで、
また古さから新しさまで重なる環境へと一変する。

リノベーションとは刷新である。
しかしこのリノベーションはただ新しく作り替えるのではなく、また古さと新しさを対比的に扱いもしない。
この家が重ねてきた時間、歴史を残すことで、日々複数の時間軸を持つ空間を行き来する。
元々あった場であるが全く違う、新しい場であるのに重ねた時間を感じる、所謂リノベーションとは別の「新しさ」が実現できたのではないかと思う。(文:平野勇気)

竣工
2020.10
種別
改修
用途
住宅
規模
213.21㎡
構造
木造
所在
新潟市中央区
設計
東海林健建築設計事務所(担当 平野)
構造監修
田中建築構造計画(担当 田中)
施工
丸正建設
撮影
©アトリエラボン 村井勇

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